日々想うことを、つづります。
 
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出来ないこと
人には誰にでも得手不得手、できること、できないことがあるはず。私にもできないことは多くある。その出来ないことをやらされたらどうだろう。苦手なことをやるように要求されたらどうだろう。この上ない苦痛と感じるに違いないと思うのだが。

トラットリア・アグレステでの出来事。
アグレステの厨房で、サラダの仕込みや盛り付け、ドルチェのトッピング付けなどを行っている利用者がいる。Tさんと呼ぼう。
Tさんは数を考えるのが苦手。聞いてもすぐに覚えられない。
数を考えるのは苦手で、質問されても答えられないことを相手にうまく伝えることもできていなかった。厨房では、数が苦手だということをきちんと認識しないままに、計算や、数を考えて作業することを促してしまっていた。それらのことが原因で仕事の手が止まったり、泣いてしまったりしていた。するとまた注意を受けてしまって、どうしていいのか解らなくなってしまう・・・その悪循環に陥っていたようである。苑に帰ってきて部屋で泣いていることが何度かあったと聞いていて、原因が何なのか、アグレステ職員に聞くと、指示をしても黙ったまま動かなくなってしまうことが多々あるという答え。どんな時かを再度尋ねると、サラダ用の野菜で、一本の物を2つに分けて使うものがあるそうで、お客様が2人入ってきたときに、厨房のスタッフが、今2人のお客様が来たけど、「2人だと何本の野菜が必要か」を問いかけているそうである。4人入ってきたときも、「4人だから何本必要?」とTさんに考えてもらっているのだそうである。理由は数の計算等を覚えてほしいからとのこと。2人なら1本、4人なら2本なのだが、それが考えられなくて手が止まる、思考停止に陥る、状況のようである。
本人に確認すると、数を問いかけられてもわからないから答えられないこと、就職するんなら数を覚えようと言われたことを話してくれた。出来ないことを要求されていたのである。それって精神的虐待ではあるまいか。
すぐにアグレステの支援員に電話を入れた。出来ないことをやってくださいと要求されることほどの苦痛は無い事、それは精神的虐待と考えるべきことを伝えた。支援員がすべきことは、厨房のスタッフにTさんに数を覚えてほしいならどのような伝え方、指示の出し方が適切かをTさんの特性に合わせて伝えなければならないこと、それが支援員の役割であることを少し言葉が強くなっていたが、かなり厳しく伝えた。Tさんが苦手な考えることをしなくても身につく方法を考え、見つけ出し、本人に伝えるのが支援員の役割である。私がアグレステの支援員に行ったことは、お客様がお二人見えたら何本必要ですか?ではなく「お客様がお二人見えました、一本用意してください。お客様が4人見えられましたので、2本用意してください。」と声掛けを繰り返し行うこと。それを繰りかえすことで、計算するのではなく、ある種条件反射のように、4人の時は2本、6人だったら3本と、単純に覚えてもらうようにしてほしいと伝えた。様々な工夫をしながら、厨房スタッフと利用者の間に立って、より良い環境を作ることが支援員の仕事なのだということも、併せて伝えた。
Tさんに、数の計算は出来なくても就職はできると思うけど、でも数は覚えようね、と話すと、にっこりしてくれた。
ここで問題は一人一人の特性に応じて、どのような支援環境を整えればよいかを支援者は常に考えておかねばならないこと。日常の何気ない言動が相手を深く傷つけてしまっているかもしれない怖さを自覚しておかねばならないこと。

利用者にとって一番身近に接するのが支援員なのだが、身近である故に、傷つけたり、配慮が足りなかったりということが、まま起こりがちである。常に自分の支援の有り様を検証しなければならないと思う。





 
【2016.04.06 Wednesday 09:54】 author : 長谷川 淺美
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この記事に関するコメント
こんにちは!!検索してしるうちに、こちらのブログにたどり着きました。

障害者のある方にだけでなく、誰しもに当てはまる事だと感じました。ちょうど、先日もテレビで、ある大手の代表の方が、苦手な事に時間を使うのではなく、出来る事をどんどん増やし広げていく。と、いうような事を話されてしました。
つい、苦手な事を克服したい。してほしい。と、思うあまり、無理をさせてしまうんですよね。
改めて考えてしまいました。
とても参考になりました。
ありがとうございます。

突然、失礼致しましたm(_ _)m
| 訪問介護員 | 2016/04/13 3:00 PM |
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